1千年の歴史
品川宿の歴史はいつごろ始まったのか。その謎を解くカギがお寺にある。
品川宿一帯にはおよそ30の寺院があり、しかも全宗派がそろっているが、その創建年を調べると、古くは品川寺806~810年、常行寺848年、来福寺990年といった古刹があり、またかなりの数の寺が1200年代から1300年代に集中して創建されている。このような古い時代から様々な宗派の寺が建てられたという事実は、おそらく今から1千年前頃から、諸国から人々がこのまちに集まり始め、農業や漁業だけでなく、それなりに産業も興り、まとまった集落が形成されていたものと考えられる。
品川の始まり:湊町の成立
今から1千年位前(平安時代)に南品川の沖合に天然の良港があることがわかり、その湊を中心に品川のまちが発展を始める。
永く輸送の中心は海路。船による輸送が主で、湊はとても重要な施設だった。
鎌倉〜室町時代:関東一円が発展を始めると、武蔵国の入り口に位置する品川は、関東における物流の拠点となった(品川より北は湿地が多く、良い湊がなかった)。
京都、大阪、紀州といった当時の日本の政治、経済、文化の中心から、海路で運ばれてくる物資は、一旦、品川湊に集積し、そこから陸路、内陸の国々へと運ばれた。
西に山が迫って東はすぐに海、南北に細長い大変に狭い品川に諸国から人や物、情報が集まってきて、まちが形成された。
江戸名所百景 品川すさき 品川歴史館蔵
御殿山 美人 品川歴史館蔵
東海道五十三次之内 品川之図 品川歴史館蔵
遊廓図 品川歴史館蔵
武蔵国浅草海苔製図 品川歴史館蔵
品川汐干 品川歴史館蔵
江戸名所 高輪秋の景 品川歴史館蔵
当盛江戸の花 品川歴史館蔵
東都月之名所 品川の半月 品川歴史館蔵
歴史を振り返る
・鎌倉時代頃から、すでに武蔵国の物流拠点として栄える。
・品川宿周辺30ヶ寺の創建年代、1200~300年代に集中。
全宗派が揃っている。すでにまちが出来上がっていた証拠。
・物流によって室町時代(1400年代)に一つの頂点を極める。
・江戸時代に入って、宿場町として栄える。
宿場町であり、猟師町、寺町、屋敷町、行楽地でもあった。
・幕末にペリーが来航、お台場が築かれる。最初の埋め立て。
・明治5年に鉄道が開通。品川浦の埋め立てが進む。
・明治時代~数々の近代工業が発祥する。
東京高輪海岸蒸気車鉄道之全図 個人蔵
高輪蒸気車之図 品川歴史館蔵
東海道は今や貴重な歴史文化遺産
品川宿の入り口、八ツ山口から青物横丁の南端までが約2㎞。
そこからさらに鮫洲、立会川、鈴ヶ森口までの約3.7㎞にわたって
江戸時代以来変わらない道幅で東海道が残っている。
これだけの距離、古い東海道が残されている例は全57次の中でも極めて珍しい。
しかも品川宿の場合は、それが今も日常の生活道路として使われているところに、
大いなる価値がある。
東海道は今や品川宿ばかりでなく、
日本が誇るべき歴史文化遺産なのである。